〇外観デザイン
計画地は、豊洲埠頭の根元に位置している。 水辺への表面積が大きく、一方で周辺の建物密度は、極めて低く、水辺越しに、東京ベイサイドのアーバンウォールを一望できる唯一無二の場所である。
豊洲は、非日常が傍らにある「日常性」をたずさえた場所であり、コロナ禍においても、ウォーキングディスタンスで非日常を体験できる多様性を持った都市の中のペニンシュラと言える。
この半島に、スタンドアローンで存在できる豊洲のシンボリズムを体現してほしいというのが開発事業者からのリクエストであった。
シンボリックでありながら、奇をてらうことのない、自然の総意 を形にすることが好ましいと考えた。大樹のようにたくましく環境を守る存在をタワーの象徴性に重ねたいと話したときに、事業的価値とデザインが同調し、関係者の総意と、自然環境にも承認されたように観じた。
低層部は、中間層免振の下部地盤側に属し、文字通り、地層地盤のような積層デザインと壁面緑化で周辺のランドスケープを引き込みながら隆起する丘ととらえている。
一方免振層の上の高層部は、植物の葉が螺旋を描きながら成長する「らせん葉序」をデザインに取り入れた。白とガラスのキューブが2重螺旋を描いてダイナミックに上昇し成長する過程を可視化した。 タワー上部に行くにしたがって、螺旋のガラスヴォリュームが大きくなり、凹凸のあるバルコニー手すりにより空を乱反射させながら、キラキラと空に溶け込むデザインとしている。
〇内観デザイン
インテリアデザインについても、自然の総意 を可視化することを考えた。グランドレベルのエントランスは、丘にアクセスする場所であり、トポロジカルでシンプルな操作により、丘の傍らの風穴のような自然地勢を具現化している。グランドレベルよりシャトルエレヴェータにより免振層の上の4階レベルにアクセスすると、広大なホール空間が広がっている。インテリアスペースのコアともいえる場所で、大きな「樹洞」のようにやさしく包まれた場所である。年輪を垂直方向に可視化して、幾重にも重なるストリングの環を形成している。
可視化された年輪は、大樹の歴史であり、大地の恵みを枝葉にみちびく導管であり、天より降り注ぐ光のエネルギーを無数の縦糸として大地へ繋いでいる。
その空間コアの周りには、様々な生活シーンにこたえる機能空間の環が配置されている。
積層の丘と高層部タワーとの間の結節点に、光の環、機能空間の環を共存させた。 4階に持ち上げられた街路空間として、内に開き対話する場所、外につながるシーンを展開させながら、活動が連鎖するまちなみをつくる試みでもある。
自ら閉じて内省し、外に開いて環境と対話することで、ここに暮らす人々が、ポストコロナの時代を迎え、その先の未来のための、有意義でやさしい生活の居場所であってほしいと願っている。
DATA
デザイン監修 外観 共用部・共用室